想ひ火

寺本祥生の世界

   逃避行

  
   手に手を取り合い飛び乗る北方行の列車にて


   当てとて浮かばぬ逢瀬よと


   行き当りばったりの秋田行き


   暮れゆく車窓の薄暮に浮かぶあなたの不安顔


    そっとあなたの手を握り締めると


    ギュッと握り返すあなたの手


    そうだよねと、 もう片方の手であなたの手を包み込み


    なんとかするよと微笑んでみる


    わたしとて不安はあるけれど


    あなたの不安な顔など見たくもなく


    強気を見せただけとも云えずはったりを押し通す
 


      暮れ行く半ばの逢瀬にて


       あなたの中に私を見る


        あなたのわたしであるのなら


         たとへ地の果て迄も

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