想ひ火

寺本祥生の世界

春がやって来た、戦争もやって来た。

 春は突然にやって来た。
 春の兆しはあったものの気付かぬまま、
 冬の寒さに身を晒していたのだろう。
 そして突然、春らしさが周りに溢れている。
 あまりの突然さに嬉しさもままならず、
 戸惑うばかりで春を受け止めるのが精一杯。
 とは云うものの、春は春。
 カレンダーも三月の中旬なのだから、
 当たり前と云えば当たり前なのかもしれない。



 物騒な世の中で物騒がしい中、
 戦争の心配までもしなければいけない。
 だからと言って直ぐには何かましな事が出来る筈もなく、
 歯痒さが全身に回っている。
 ああ、なんと人類は愚かなのだろう。

 菜の花

菜の花
菜の花が咲いている
いっぱい咲いている


菜の花が好き
菜の花は食べるのも好き



一面に咲いた菜の花が造り出す世界
優しさに溢れる明るい黄色がいっぱいの世界
其の菜の花を支える若緑の茎と若葉もいっぱい
若くて柔らかそうな之も生命溢れる緑の世界


とても美味しそうな緑の世界
日本人はこんな菜の花を食して春を楽しむ


菜の花が好き
桜の花の次に好き


菜の花が好き

巡り巡りて


 今は未だ冬
 冬は其の冷たさをズルズル引き摺って
 何時までも牡丹雪のようにベタベタと
 生命に纏わり付いてくる


 もうすぐ春
 春は陽の温もりに、まだ寒さを帯びる中
 生命は芽吹き綻び花に散り
 緑の世界に生命の想ひを託さむ


 そして夏
 夏は激しき熱情にて己をも焼き付くさむと
 ジリジリと照りつける太陽の光の中で
 熱さを生命と伴に共有せしめむ


 漸くの秋
 秋は豊満な胸の内に
 優しく生命を抱き込もうと被い込み
 実りくる生命の先成る日を仄めかす