想ひ火

寺本祥生の世界

花も散るらむ

 雨風に散らされた花弁が


 川面に立ちてキラキラと光り


 光の乱反射に身をくねらせた


 春の酔いが光の洪水の中で覚醒し


 光の世界を幻出し水中に其の世界を形創った


 幸いなるかな


 わたしは其れを目撃し感じ取れたのだ

 さくら

 さくら さくら
 
  咲き誇るさくらかな


   さくらの花の華たる(さくらの)花に


    古よりの想ひのこそが漂うて


     陽の処に忍ばるる





 さくら さくら


  咲き誇るさくらかな


   さくらの花の華たる花に


    古よりの想ひのこそが漂うて


     陽の処に昇るかな

  さくら

 さくら さくら さくら待つ一日一日を
 
 今日はまだか、今日はまだかと


 心弾ませての一日を過ごす


 咲いた処、在ると聞けば


 ああ、羨ましいと


 わたしの処も早く咲いてよと、願うばかり


 もう、そんなに遠くない近日中に


 さくらが咲くだろう