想ひ火

寺本祥生の世界

 夜明け前


   夜の帷が上がろうとしていた
   
   大地に薄く靄が立ち昇り
   其の大地を包み込もうとしていた


   未だに姿を見せぬ太陽の陣取る筈の東の空が
   薄紅をさしたかのように、幽かに紅く染まっていた

×

非ログインユーザーとして返信する