想ひ火

寺本祥生の世界

  烏


 暮れ行く冬空の寒風吹く中
 何処かで烏が、カアーカアーと二聲上げた
 寒くはないのだろうか
 真っ黒な羽に包まれているのだから
 余が思ふ程には寒さも感じないのだろう
 そもそも寒いと云う感覚はあるのだろうか
 人族足る余には分かりもしない
 否、寒いと云った感覚は有っても
 どうしようもないと云う事なのだろう
 之が在るがままの姿であり、然る可きものなのだろう
 カアーカアーカアー、再度烏の鳴き声が聞こえた
 さてさて何処へ飛んでいくのだろう
 そろそろ巣に戻るのだろうか
 寝床でも探しているのだろうか

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