想ひ火

寺本祥生の世界

 ゆきんこ 雪子 君に捧ぐ

 雪が降る
 雪が降る
 天気予報通り雪が降っている


 昔
 やはり雪は降っていた
 夜の暗さの中で雪が街の灯りを反射し、妙に明るさを保っていた
 風は強く雪が上から下ではなく横殴りに降っていた
 そんな雪道を一人とぼとぼと歩いていた


 雪子、彼女の面影が脳裏に浮かび上がっている
 おまえを汚したわたしには罰が与えられ
 おまえの前からわたしは姿を消さざるを得なかった
 ゆきんこのように雪子が消えたのではなく、わたしが消えていた
 雪の中の雪子は、今どうしているのだろう
 わたしがわたしで在るように
 雪子、あなたもあなたとして今は在るのだろう

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