想ひ火

寺本祥生の世界

薄明の麗人

 夜明け前の空に浮かび、西の空を下る下弦の月


 空の明るさが増す中、細身の躰がうっすらと浮かび上がっている


 つい先日のその姿は、ほぼまん丸い躰つきだった


 それが見る影もない細身になっている


 ・・・等と思いを巡らしながら時を費やしていると


 先程よりも少し細くなっている


 そんな事に気が付いて注意深く観察する


 時間の経過と伴に少しずつ細くなっている



 
 もう今では明るくなりかかった空の中に消え入りそうだ


 これ以上、やせ細れない程の薄っぺらい躰が、うっすらと天空に残っている


 見えるか見えないかの姿形に、消え行く月は明るくなった空の中に溶け込むでしまう


 空を下り終わる前に、形を失った月は空の中に溶けてしまった

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