想ひ火

寺本祥生の世界

 煉獄の炎に焼かれて


 想ゑばこそのあなた故


  我が想ひの底に在りし焦げた想ひのカス


   我は煉獄の炎に焼かれむ


    時の流れこそ失き想ひの炎故と覚ゆも其の限りとて


     此の我身、永久に煉獄の炎に焼かれむも然も在りなむ

 片想ひ


 紅く燃ゆる山肌は


  里の村娘に恋する山神の


   想ひ為る也

虹を目指して

二重の虹が南南西の空に掛かった
暫くの間鮮やかに掛かっていた
何か良い事でも有りそうな気分が湧いてくる
二重の内の一つの虹が形を崩し
消えようとする前迄に
虹の中に在ると云う虹の国に辿り着きたいと
そう思って駆けて行く
人の駆ける速さなんてたかが知れているけれど
全速力で何とか辿り着きたいと
走る 走る
少しずつ形を崩していく虹を眼で追いながら
走る 走る
力尽きる迄力いっぱい走る