想ひ火

寺本祥生の世界

 ありがとう

 見てくれた
 え? 何の事
 黒百合よ 咲いていたでしょ
 御免 御免 何処に咲いているの?
 庭のスモークツリーの根元近くに咲いているわよ
 御免 知らなかったよ 見ておくね
 妻は珍しい色々な花などをよく育てようとする
 まさか 黒百合までも植えていたとは
 別に妻のやる事に関心がない訳ではない
 翌日の朝 妻はわたしの手を取って黒百合を紹介してくれた
 黒百合とは云え 黒い色をしている訳でもなかった
 その百合には気付いていた
 色の濃ゆい特徴的な百合だとは認識していたのだ
 でも其の百合が黒百合だとは思はなかったのだ
 
 2~3日後幾つか咲いた黒百合の数本を
 妻は切り取って玄関先に生けておいてくれた

 ドンキホーテ

 あなたは其処に居て
 わたしが此処に居る
 わたしはあなたに近づきたい
 でもあなたは誰も近づけないバリヤーを張っていた
 何故?
 わたしにはそんな事をされる覚えがない
 でもわたしは無理にあなたが張ったバリヤーを壊すことは出来ない
 わたしはあなたを愛しているからだ
 わたしはあなたを守らなければいけない
 あなたに敵として認識されるのは困るのだ
 わたしはあなたを守りたいだけなのだから

 君に在らむ


   陽に紅く染まりて


    白身のひと切れとて


     我が口に入る事失く


      遠くは海の浜に在りて


       紅く染まるも


        語り為せば成る哉