想ひ火

寺本祥生の世界

ゆくはる くるなつ

   くるはるは まちどうしく


   いちにちいちにちを くびをながくしてまっている


   と、おもうまに はるはとおりすぎてゆく


   めぶき そだち はなをつけるみどりなるいのちは


   むしの きをひこうと


   あるいは おのれのしそんはんえいのために


   あでやかなはなをひらき つぎなるいのちをもたらさむとする


   ひともいのちのひとつなれば


   そんなあでやかないのちに うつくしさをもとめ


   おのれのいのちをも たくさむとする


   そして またたくまにはるはとおざかり


   はるにかぶさるように あめのじきをとおりこして


   なつがおそいかかってくる


   そんななつをも いのちは おのれのさんがとして


   あきをむかえむがための かていとする

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