想ひ火

寺本祥生の世界

 朝 出

   冬の匂ひがぷんぷんと鼻をついて


   冬の楽しさなど微塵も覚えられず


   冷たい風が寒さを通り越して、手の指先までも悴ませる


   月の光が大気を貫き、身体をも貫き通さむばかりに降り注ぐ中


   慌てて厚手のコートのフードを被り込む


   当然まだ明けぬ朝の早くからの出勤に


   白く煙る吐く息がわたしの存在を気付かせてくれた


   わたしがわたしで在るが事を

風はお友達?

   風の輩が庭先で燥ぎ回ると


   手入れの悪い庭木が、がしゃがしゃ、ざわざわと騒がしい


   静かさが大好きなわたしは


   そんな風の奴等が大嫌い


   だから風とお友達になって


   なんとか手懐けて


   大人しくさせている


   ご褒美に庭のテラスで


   冷たい紅茶など差し上げてみようかな

子鬼からサチへの連絡


   雪達磨大王、日本大侵略


   ついに日本は大王の足元に平伏すのか


   人類界の国々の中にあっては、その先進国の一つに成り上がり


   技術力を誇り、最先端の科学力を駆使しながらも


   大自然界の中の冬の大将軍の一人であり


   今年は更なる勢力拡大に力を発揮する雪達磨大王のその力に


   為す術もなく屈した日本国は


   見事に大王の軍隊に蹂躙されてしまった


   日本の民衆は守ってくれる筈の政府を頼る可くもなく


   ただ只管、大王が力を奮う寒さの下で、


   耐え忍ばざるを得ない今日この頃である