想ひ火

寺本祥生の世界

 幻月の口伝


 十三夜の月が
  美への求愛を語らい


 十四夜の月が
  其の身を紅く染まらせ


 十五夜の月が
  白く輝き丸く成りて散らむ


 遠き日に
  語り部の口より出てしものがたり

 戻り梅雨

 出戻りと云えるかどうかは怪しいが
 戻ってきた分には優しさを表に出しており
 元々出戻りと云う言葉自体にも問題があるのだが・・・
 出戻り梅雨は内に秘めた気性が荒い事も儘ある
 今のところ、見た目には大人しそうだ



 それでもいつ何時、表を返して
 刺有る枝をまるで鞭を振るかのように使い暴れだすかもしれない
 、と云うよりは其の方が今の世では普通に為ってしまった

  雨

 雨の粒が
 物干し竿横一列に並び
 並むだ列の大きな一粒が
 地面に跳ねた
 ピシャッ
 
 
 降り続く雨
 昼間だと云うのに薄暗く
 戸外の生活音が、激しさを増す雨にかき消され
 異様な静けさを醸し出す
 


 一時後漸く
 蛙の鳴き聲が聞こえ出し
 世界が元に戻った