想ひ火

寺本祥生の世界

 笑 顔 狩


   わたしは笑顔の狩人


   あなただけの笑顔の狩人


   あなたの素敵な笑顔の収集家


   沢山沢山、あなたの笑顔を狩ってきた


   あなたのいろんな笑顔を集めてきた


   あなたの素的な笑顔がわたしを嬉しくさせてくれる


   あなたの素的な笑顔がわたしを幸せにしてくれる


   怒った後の笑顔
                  泣いた後の笑顔
   心弾んだ時の笑顔
                  心沈んだ後の笑顔
   喜びに満ちた笑顔
                  悲しみの後の笑顔
   ツンと澄ましてからの笑顔
                  妙に作ったぎこちない笑顔
   心からのとても素的な素的なあなたの笑顔


   どれを取っても、わたしには悦ばしい


   あなたのどんな笑顔もわたしには喜ばしいのだから


   これからもいろんな素的な笑顔をわたしに下さいな

  偽 り  ( 想ひ火より )


     吾が妹の乳房に手を当て濡れば


      想ひこそ溶け交わる


       時の流れかな

   烏


   冬の佇まいが少しずつ其の形を整えようとしている


   冬の場の入口に佇み、山陰を遠くに大地を眺めていた


   烏が二羽、番いなのかどうかは分からないけれど


   何だか仲良さ気に戯れ合っていた


   
      カァー カァー                 
                       カァー カァー カァー
      カァー カァー カァー
                       カァー カァー
                       
                       カァー


   楽しそうだなあー、と思ひながら


   そんな二羽を暫らく眺めていた


   見えなくなる迄視線を送り続けていた