想ひ火

寺本祥生の世界

   雨


 雨の雫が横一列に並んだ
 並んだ内の一つの大きな雫が地面に跳ねる
 ピシャッ




 降り続く雨
 昼間だと云うのに
 戸外の生活音が降る雨にかき消され
 静けさを造り出している




 そして、漸く蛙が鳴き出した

魔法使いミツキさん

庭に咲き誇るモッコウバラ


うちのミツキさんが咲かせたものです


此のモッコウバラの勢いには脱帽です


ミツキさんがコツコツと庭を彼女が思うように造っています


今のあなたは躰が不自由だと云うのに好きなようにやってもらっています


でもあなたは土弄りが好きだと云う


だからわたしもミツキさんに任せています


それが今では春先の庭には、花、花、花、花がいっぱい


ミツキさんは魔法使いなのでしょうか


いやいや、ミツキさんはわたしのお嫁さん


わたしもまたあなたに生かされています

 春は幻


 忙しく過ぎる春の日に


 想ひは悠々たる時の流れに在りて


 瞬き程の花の開きに


 美しき花を君と伴に愛でむ


 


 光に浮かぶ其の艶姿に


 風すら騒めき立ち狂気に溺れ


 纏う花弁を散らさむ也